研究概要 |
本研究の目的は,(1)界面活性剤を表面に吸着しているコロイド粒子の凝集過程の定量的評価,(2)エマルション等の柔らかなコロイド系の分散安定性を支配する諸因子の解明,(3)界面活性剤水溶液中でのポリスチレン(PS)粒子の分散安定性を支配する粒子表面の高分子鎖の挙動を明らかにすることである. (1)については,高効率吸着材として期待される粘土鉱物(モンモリロナイト)微粒子へのカチオン界面活性剤の吸着挙動と疎水性環境汚染物質の吸着除去への応用に関する検討を行った.界面活性剤添加前のモンモリロナイト微粒子は水によく分散するが,カチオン界面活性剤を添加して吸着させると表面負電荷が打ち消され,互いに凝集し,沈降する.界面活性剤添加後の吸着量は数時間以内で極大となり,その後,徐々に減少して平衡値に至ることを確認した.このことより,疎水性物質の吸着除去剤としての応用では,活性剤の吸着量が極大となる時間を考慮することが重要であると示唆された. (2)については,牛血清アルブミン(BSA)の乳化作用に焦点を当て,BSAを乳化剤として使用し,水中油滴エマルション調製時の諸条件の影響を検討した.油滴の粒径やエマルション安定性を調べたところ,BSAの等電点近傍(pH=5)では著しく乳化作用が減少することを明らかにした. (3)に関してはAFMコロイドプローブ法を用いて,陽イオン界面活性剤(CTAB)水溶液中でのPS粒子とSiO_2基板間の表面力測定を行った.CTAB溶液濃度を0.1〜5mMまで段階的に増加させたところ,表面力は引力から斥力へと変化し,吸着したCTAB分子による表面正電荷を起源とした拡散電気二重層斥力が支配的になっていく過程が確認された.CTAB溶液中でのPS-SiO_2基板間の表面力挙動はSiO_2同士間の場合とは異なる点が多く,PS粒子表面の高分子層による特徴的な振る舞いを反映していると推察された.
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