研究概要 |
第四級アンモニウム塩(QAS)型光塩基発生剤において種々の対アニオンを有するものを新たに合成し、それらの光反応性と熱安定性を検討した。対アニオンにベンゾエートを用いると、高い熱分解温度を示したものの極性の高いメタノールや水にしか溶解しなかった。そこでパラ位にtert-ブチル基を導入すると、熱分解温度がそれほど低下せず極性の低い有機溶媒やポリマーにも溶解度の高いQASを合成できた。光照射前後の^1H NMRスペクトル変化からtert-ブチルベンゾエートを対アニオンに持つQASの254nm光分解の量子収率を求めると、0.7程度の高い値を示した。また、生成するアミン由来のピークの出現も確認できた。このQASをポリ(グリシジルメタクリラート)(PGMA)中を添加した薄膜は、光照射と後加熱によりテトラヒドロフランに不溶化した。 対アニオンにフタルイミドアニオンを有するQASは有機溶媒に対する溶解性に優れていたが、融点、熱分解温度とも低かった。対アニオンに2,4-ジニトロフェノラートを有するQASは、熱分解温度は高く光反応も従来のチオシアナートアニオンを有するQASと同等の速さであったが、有機溶媒に対する溶解性はやや低くかった。またPGMA中に添加して光照射と後加熱を行っても膜の不溶化は起こらなかった。 第1級アミンを生成するO-カルバモイルオキシムについて光反応性と熱分解性について検討した。この中で、チオキサントンを増感剤として添加したり光塩基発生ユニットに組み込むことにより実用化に有用な365nm光照射で塩基を生成させることができた。これらの知見をQASに応用し、366nm光に高い感度で第三級アミンを発生する分子あるいは分子系を構築してゆく予定である。
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