(1)石油コークスおよびこの石油コークスを2100℃(PC2100)、2600℃(PC2600)で黒鉛化したものをフッ素ガス(3x10^4Pa)を用いて200℃、300℃で2分間フッ素化し、2800℃で黒鉛化したもの(PC2800)は400℃でフッ素化した。フッ素含有量は200℃でフッ素化した場合は検出限界内(0.2at%以下)であったが、300℃でフッ素化すると0.3-0.4at%のフッ素が検出された。表面フッ素濃度は4.9-17.8at%で黒鉛化度の高いPC2600の方がフッ素濃度が低くフッ素ガスと反応しにくいことがわかった。C-F結合は共有結合で、フッ素化により表面酸素濃度も減少した。フッ素化により表面積に大きな変化は見られなかったが、ラマンシフトより表面構造の乱れが増加することが示された。透過型電子顕微鏡による観察ではPC2800の表面は黒鉛化過程における酸素除去反応で閉じた構造になっているが、フッ素化により表面閉塞構造が炭素-炭素結合の裂断により開いた状態になっていることがわかった。 (2)表面フッ素化によりPC2600の初期クーロン効率は電流密度60、150mA/gでそれぞれ12、26%上昇し、電流密度が大きいほど高くなった。また、電流密度が大きくなるとフッ素化の効果がより明確に現れ、放電容量も増加した。インピーダンス測定より、フッ素化石油コークスの電荷移動抵抗が減少し、反応速度が増加することが示され、高電流密度における放電容量の上昇とよく一致していることがわかった。
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