1)表面フッ素化による石油コークスの表面構造変化 石油コークスおよび1860℃、2100℃、2300℃、2600℃、2800℃における熱処理で黒鉛化した石油コークスの表面構造をフッ素ガスおよびCF4ガスを用いるプラズマフッ素化で変化させ、その表面構造変化とリチウム二次電池負極特性を調べた。表面フッ素化を行った石油コークス試料のフッ素含有量は1at%以下で、プラズマフッ素化の場合よりフッ素ガスによる表面フッ素化の場合が表面フッ素量は多い。XPSによる表面分析ではすべての試料でフッ素が検出され、フッ素化温度が上がるにつれて、またプラズマフッ素化の場合はフッ素化時間が長くなるにつれて表面フッ素濃度は高くなった。表面フッ素化によって比表面積は減少し、またラマンスペクトルより表面付近の構造の乱れが大きくなることがわかった。透過型電子顕微鏡による観察より、石油コークスのエッジ面は黒鉛化過程で閉じた構造に変化することおよび表面フッ素化でこの閉じた構造が破壊されることがわかった。 (2)表面フッ素化石油コークスの有機溶媒中にける電極挙動 1MLiClO_4エチレンカーボネート(EC)/ ジエチルカーボネート(DEC)中における石油コークス試料のサイクリックボルタンメトリーでは未処理石油コークスと1860℃、2100℃熱処理石油コークスでは変化が見られなかったが、2300℃、2600℃、2800℃で黒鉛化した試料ではリチウム機運0.6Vに現れるECの還元分解のピークが小さくなり、フッ素化の効果が観察された。60mA/g、150mA/gにおける定電流放電では、2300℃、2600℃、2800℃熱処理試料で初期クーロン効率が大幅に上昇し、フッ素化の効果が現れた。これは高温熱処理によって生じた石油コークスのエッジ面の閉塞構造がフッ素化によって開かれ、表面被膜の生成とリチウムイオンの挿入が容易になったためと考えられる。
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