研究概要 |
三年計画の初年度は、インターカレーション化合物を系統的に合成した。ゲスト化合物として各種メルカプトカルボン酸(メルカプトコハク酸、3-メルカプトプロピオン酸、システイン、4-メルカプト安息香酸など)、ホスト化合物としてMg-Al系層状複水酸化物(イオン交換容量3.67mmol/g)を用い、ホストの構造とゲスト分子の違いによるインターカレーションの有無を検討した。 様々な濃度、温度、pH条件でメルカプトカルボン酸水溶液とMg-Al系層状複水酸化物を反応させ、最適反応条件を検討した結果、いずれの化合物も60℃、24hではほぼ定量的に反応が進行することがわかった。 得られた複合体をXRD,solid-state NMR,Raman,FT-IRによりキャラクタリゼーションを行った。固体^<13>C NMRメルカプト基の隣の炭素が大きく高磁場シフトした。また、Ramanスペクトルによるとυ(S-H)が消失し、新たにυ(S-S)のバンドが現れたことから、いずれの化合物でもメルカプト基の酸化を伴うインターカレーション起こっていることが明らかとなった。また、層間では、酸化された化合物の両末端のカルボン酸が、上下の水酸化物層を架橋する形で配列していることが明らかとなった。このことは、対応するジチオ化合物(3,3'-ジチオジプロピオン酸、2,2'-ジチオジ安息香酸、シスチリなどのインターカレーションによっても確認できた。 来年度は、どのような過程で酸化反応が進行しているのかをFT-IR, NMRなどを用いて詳細に検討する予定である。
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