3族窒化物半導体は、主にサファイヤ基板上に作製され、多くの欠陥を含有する。我々の見出したZrB_2基板では、格子定数、熱膨張がほぼ一致し、良質なGaN膜(貫通転位10^7/m^2)が成長する。このZrB_2結晶は高い融点(3220℃)のため浮遊帯域溶融法(FZ法)により育成するが、基板としての利用には可能な限り良質化の必要がある。本研究では、ホウ化物の結晶育成において問題となる高純度化と、高融点をもつ結晶の良質化について検討した。 高純度ZrB_2単結晶を育成するための原料合成法を検討した。市販粉末は純度が低く(99%以下)、原料として用いると、鉄、炭素等の不純物が結晶中に残留した。鉄は結晶中に非常に弱い強磁性を示す部分を生じさせ、炭素は加熱により結晶表面に析出する問題を発生させることがあった。これら不純物を除くため種々の合成法を試みた結果、ジルコニアとホウ素の反応を採用した。得られた原料中の鉄、炭素不純物量をそれぞれ30ppmに低減し、結晶中では4ppmと検出感度以下(<20ppm)にまで低減した。この結果、上記不純物による問題は解決した。 高品質なZrB_2単結晶の育成法を探るため、4-6族二ホウ化物単結晶の品質を比較することで、3000℃を超える育成温度域における結晶性を決める要因について調べた。エッチピット密度については、育成温度と相関を示し、育成温度が低いほどエッチピット密度が低いことが判明した。ZrB_2結晶の場合、200℃の低下によりエッチピット密度が半減するものと予測された。亜流界とクラックの発生に関しては、亜流界を含まないZrB_2結晶が最も良質である。これは熱膨張係数の異方性が小さいためと判断した。今後さらに良質化するには、育成温度を下げる融剤の探索が重要に思われる。
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