近年、小型かつ大容量で取り扱いやすい二次電池の開発が重要となっている。その中で高分子固体電解質を用いた電池は薄膜成形性、耐衝撃性などを兼ね備えた高エネルギー密度電気材料として期待されている。本研究では、主鎖にジメチルアンモニウム単位からなる脂肪族系ポリ(オキシテトラメチレン)アイオネン(DPI)から作る固体電解質のイオン伝導特性を探求した。分岐型ポリ(オキシエチレン)との比較も行った。DPIは、(CF_3SO_2)_2Oを開始剤としてテトラヒドロフランの開環リビング重合を行い、(CH_3)_2NSi(CH_3)_3を加えて停止反応と鎖延長反応を同時に行うことにより合成した。電解質は、高純度アルゴン雰囲気([H_2O]<1ppm>のグローブボックス内にて40℃でDPIとリチウムビストリフルオロメタンスルホンイミド(TFSI)を加熱混合して作製した。[Li^+]/[-0-]を変量した数種の試料を高真空下、40℃で12時間熱処理を行った後、25℃で24時間放置後、示差走査熱量測定、複素インピーダンス測定、リチウムイオン輸率測定、動的粘弾性測定に供した。さらにリチウムイオン点を持つシリカ(Si-Li)を複合化した試料についても同様の測定を行った。試料コードの数字はSi-LiおよびTFSIの濃度である。各試料の導電率のArrheniusプロットの結果、DPIにTFSIをドープした系では塩濃度の減少と共に室温の導電率は上昇し、低温領域では[Li^+]/[-0-]=0.2で最も高い導電率を示した。Evans式により決定した60℃でのリチウムカチオン輸率もこの系で最も高かった。DPI-TFSI0.2にSi-Liを複合化すると、低温領域の導電率が良い固体電解質となった。これは、シリカを混合することにより、DPIの結晶化が抑制されたことに起因する。この試料では力学的性質の向上も認められ、加工性の良い固体電解質であった。
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