研究概要 |
本研究では,新規マイクロキャリアとして,ポリ(γ-メチルL-グルタメート)(PMLG)球状粒子にリガンドとしてジアミノエタン(DAE)を化学修飾したPMLG-DAEおよび架橋ポリ(ε-リジン)(PL)球状粒子を調製し,その細胞増殖能と粒子のpK_aの関係について評価した。 1)マイクロキャリア調製法および評価法:PMLG粒子は既報の懸濁蒸発法に従い調製した。得られた粒子にDAEを導入し,アミノ基導入量の異なるPMLG-DAE球状粒子を得た。また,PL球状粒子はクロロメチルオキシランを用いて架橋させた。これらの球状粒子と市販の培養用キャリア上での繊維芽細胞由来MouseL929の細胞増殖能を静置培養によって比較検討した。 2)結果と考察:PMLG-DAE球状粒子上での培養日数に対する細胞増殖率は,アミノ基導入量の低い粒子(0.2.および0.5meq/g)において細胞増殖性が高かった。逆にPL球状粒子ではアミノ基含有量の高い粒子(3.7および4.6meq/g)において高い細胞増殖性が見られた。これは細胞増殖性が粒子表面のアミノ基含有量ではなく,アミノ基を含めたマイクロキャリアのpKaも影響しており,その値が培養培地のpH(7.5〜7.7)により近いほど、細胞増殖性も向上すると推測される。 このことからマイクロキャリアと共存する系において,細胞の成育環境が生体内により近い事が重要であり,基材表面の設計を制御することにより生体適合性を得られることが分かった。 また,高い細胞増殖能を示したPMLG-DAE(0.2meq/g)球状粒子を用い、6日間スピナーフラスコで撹拌培養を行ったところ,その表面への細胞の接着性,伸展性も良好であることが確認された。さらにPMLG-DAE球状粒子を用いた場合,大半の細胞が加水分解酵素(0.25%トリプシン)を使用せずに物理的な力で剥離できた。これらの結果より,PMLG-DAE球状粒子においては従来のキャリア(Cytodex1)に比べ,細胞増殖能が高く,かつ基材から容易に細胞が剥離できることがわかった。
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