研究概要 |
我々が提案した超高分子量ポリエチレン(UHMW-PE)の重合体粉末の二段延伸法(固相共押出、次いで引張延伸)はゲル延伸法のように溶媒を必要としない点で、より安全で環境に優しい、省エネルギープロセスである。初年度は、科学研究費の申請時に行った提案のとおり、二段目の引張延伸装置を設計し、組み立てた。この装置の特徴は、試料の局部を急速に加熱し、この部分を高速(1-20mm/min)で引張り延伸することができる装置である。 いかに述べるように、この装置を用いてPTFE重合体粉末の超延伸を行うことに成功した。エマルジョン重合によって得られたPTFE重合体粉末を融点以下の325℃で加圧成形し、厚さ約0.3mmのパウダーフィルムを得た。このフィルムは脆く、直接引張り延伸することは出来なかったが、固相共押出法により融点直下で押出延伸比(EDR)6-12に延伸すると配向したフィブリル構造に転移し、高い延性を示した。そこで、まず、固相共押出法によりパウダーフィルムをEDR=12に押出し、次いで本研究で作製し延伸機を用いて共押出物を広範な温度(280-500℃)で引張り延伸した。その結果、PTFEの融解温度(335℃)よりも10-100℃高い温度で延伸すると200-500倍の超延伸が可能であった。このような超延伸物は高い分子配向(f_c=0.997)を示し、結晶化度も80-88%と高い値を示した。力学物性の詳細は現在検討中であるが、24℃におけるヤング率が122GPaに達する超延伸物も得られ様になった。今後は、PTFE超延伸物の力学物性を詳細に検討すると共に、超延伸物の構造を検討する予定である。さらに、この装置を用いて、UHMW-PEや,一般には低延性であるとされるポリー1-ブテンやポリエチレンテレフタレートなどの超延伸も試みる予定である。
|