表面プラズモン共鳴を用いて単分子膜レベルの超薄膜試料中の分極構造が観察可能な走査型近接場光学顕微鏡を開発した。この顕微鏡では2次の非線形光学効果の一種であるポッケルス効果(線形電気光学効果)を用いている。走査型トンネル顕微鏡の探針のような鋭い金属探針に交流電場を印加するとその直下では、試料中に分極構造があると2次の非線形分極が生じ屈折率が変化する。屈折率の変化量はわずか(10^<-6>程度)であり、電場が印加される領域は、金属探針のサイズ程度(φ10μm程度)と非常に狭く、対象とする薄膜はその膜厚が単分子膜程度(2nm厚程度)であるが、表面プラズモン共鳴を利用することにより、飛躍的に感度の改善が可能となる。この顕微鏡の特徴として(1)物質の分極構造を解明できる顕微鏡ツールであること(2)大出力のレーザーを必要としないこと、場合によってはインコヒーレント光源でも観察が可能なこと(3)比較的容易に入射光の波長を変えることが可能であること(4)原理的には数nmのナノ領域における分極構造の観察が可能なことなどがある。我々が観察に成功したのは、40μm×40μmにパターニングした色素単分子膜である。この走査型近接場光学顕微鏡を用いて試料のポッケルス顕微鏡像を観察することに成功した。SHG顕微鏡観察も同時いて得られた像との比較を行った結果、データの信頼性は確保されていることがわかった。現在の分解能は10μmであるが、探針を鋭いものに変え、かつ、ピエゾなどを用いて操作機構を作製すれば、さらに分解能が高い近接場光学顕微鏡が得られると考えられる。
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