研究概要 |
本研究は、水面上に展開されたTTF系誘導体とカルボキシル基(またはスルホン酸基)の分子混合系が、自己組織的な化学反応によりTTF系分子の部分電荷移動状態が形成されることで高い電気伝導特性を有する薄膜を与える点に注目し、この手法の最適化を行うことで分子エレクトロニクス分野における基盤技術の提供をめざしている。今年度中は、(1)新たな分子系の探索、および(2)自己組織化膜への適用、について研究を行った。 (1)新たな分子系の探索 これまで長鎖アルキル基を持たないTTF誘導体と長鎖アルキル基を有する脂肪酸(またはスルホン酸)との組み合わせで上記反応の進行が確認されている。そこでこれらとは逆に、長鎖アルキル基を有するTTF系誘導体EDO-TTF-SC_<18>と単純なカルボン酸である酢酸との組み合わせで反応が進行するか否かの実験を行った。その結果、このような組み合わせにおいても反応の進行が確認された。従って、上記反応はかなり広範囲にわたる分子の組み合わせにおいて見いだされることが示された。なお、この結果の一部は第51回応用物理関係関連連合講演会で報告された。 (2)自己組織化膜への適用 本実験はDr.D.Viullaume(IEMN-CNRS, Lille, France)との共同研究として行われた。酸化シリコン表面上に長鎖アルキルシラン誘導体の自己組織化単分子膜(SAM)を作製し、表面をカルボキシル基に変換した試料を準備した。この試料における表面カルボキシル基とBEDO-TTF分子を反応させることで、SAM上に電気伝導性単分子膜を形成させることができるのではないかと考えた。このようなアプローチは未だかつて行われたことがなく、単分子膜スケールの電子デバイスの実現が期待される。これまでの研究では、カルボキシル基表面上でBEDO-TTF分子が直立した高さと同程度の約9ÅのBEDO-TTF分子層の形成が、エリプソメトリー測定により確認された。なお本結果の部は、Europian Conference of Organic Films 2004で発表予定である。
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