ワイドギャップ半導体である酸化亜鉛の実用化のためには、ホモエピタキシャル技術の確立が不可欠である。本研究は、不純物添加により結晶物性を制御した酸化亜鉛結晶を水熱法によりバルク結晶化を行い、この結晶を基板化し、更にこれを使って酸化亜鉛膜結晶のホモエピタキシャル成長を試み、膜単結晶成長技術の確立を目指すものである。 3年計画の初年である平成15年度は以下の研究を行った。(1)現有する3台のオートクレーブを使った酸化亜鉛の水熱成長を効率良く進めるために、現有する1台の電気炉に加えて、新たに1台の電気炉を自作しており、3月中に完成する。この炉は温度制御を精密に行えるように3ゾーンの電気炉とした。(2)現有する水熱成長システムを用いてGa_2O_3、Al_2O_3、In_2O_3を添加した酸化亜鉛結晶の育成を行い、バルク結晶を得た。現在この結晶の解析を行っているが、組成制御に問題を残している。これらの不純物の添加により、電気伝導度が高くなることを確認した。育成した結晶の組成制御・組成と格子定数の関係の解明・偏析係数の解明が今後の課題となる。(3)高純度の酸化亜鉛バルク結晶を育成・基板化を試みた。これを用いて臭素による化学輸送法によるホモエピタキシャル成長実験を開始した。その結果、適当な条件下で結晶が沿面成長をすることを確認した。現在、成長条件の絞込み、基板結晶の高品質化を行っている。また、再現性よく気相成長実験を行うため、専用の2ゾーン横型成長炉の作製を行った。(4)結晶の電気的・光学的特性評価を開始した。(5)現有する3ゾーン電気炉でCVD成長ができるように、ガス輸送のための配管ができるように改良を行った。
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