研究課題
本年度は昨年度に引き続き、GaNベースの稀薄磁性半導体、GaCrN、GaGdNについて磁性起源を探るための基礎データとして、XAFS(X-ray Absorption Fine Structure=X線吸収微細構造)スペクトルを観測し、そのスペクトルの解析結果からドープ元素であるCrとGdの周りの局所構造の同定を試み、スペクトルの解析の結果、GaGdNについて明確な結果を得た。本研究課題で作製した試料のGd濃度6%まででは、Gd元素は明確にGa元素と置換している。(6%以上の試料は作製していない。)ただし、その解析の配位数の結果より一個のGaが欠損している可能性を示唆している。一方、GaCrNについては、第二近接のGaとの関係は昨年度解析を終了し、ヘキサゴナルGaNのGa-Nの距離より若干短い値を得ているが、第一近接については継続中であった。本年、他の測定、例えば透過TEM像との情報と鑑みて、本研究室で作製したGaCrNはヘキサゴナル相とキュービック相の混合であることが新たな解析の結果により分かった。XAFSスペクトルにはその両者が反映しているので、解析期に手間取ったわけである。これらの測定と共に、本年は分子研のUVSORでの軟X線領域でのCrとNの吸収スペクトルの観測を行った。Nの吸収スペクトルでは、吸収端より低エネルギー側で小さなコブを観測した。それはGaNにCr元素を導入した結果、GaNのバンド構造に変調が生じている事を意味する。磁性起源についての重要な情報である。Crに関しては、顕著な新しい結果は得られなかった。今後の磁性起源の解明という課題に対して、もう少し低エネルギー領域(VUV領域)での吸収スペクトルの観測によりCrのd電子のエネルギーレベルに関する情報を得る必要がある。さらに、GaGdNについては、昨年度新発光を観測したが、その発光メカニズムについて一つのモデルを提案した。
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すべて 雑誌論文 (3件)
J.Phys.: Condens.Matter 16(45)
ページ: S5555-S5562
J.Cryst.Growth 273
ページ: 149-155
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