研究概要 |
1.フタロシアニン/ペリレンヘテロ接合型有機太陽電池では,ペリレンとインジウム電極との界面付近に異常電場が存在することが既にわかっていた。本研究ではまずこの異常電場がペリレンの膜厚とともにどのように変化するかを電場変調スペクトル法で調べた。その結果ペリレンの膜厚が25nm以下になると異常電場は観測されなくなった。これはペリレン膜内の空乏層が25nmの厚さを持っていることを示唆している。異常電場が消失すると共にペリレンの光励起による光電流が極端に減少した。これはペリレン空乏層中の電場が非常に弱くなっていることを意味している。ペリレン空手層はフタロシアニンとペリレン間の電子移動によって形成される。ペリレンの膜厚が25nm以下になると,フタロシアニンとインジウム電極の間でも電子移動が起こり.その結果異常電場が消失し,ペリレン空乏層中の電場も弱くなってしまう,と解釈される。 2.フタロシアニン/フラーレン有機太陽電池の内部電場も電場変調スペクトル法で調べた。この場合には異常電場は観測されなかった。この結果は,フタロシアニン/ペリレンの場合の異常電場がペリレン分子中のカルボキシル基とインジウム電極との化学反応によって形成される,という仮説を支持するものである。 3.フタロシアニン/フラーレンの場合には光電流と内部電場との間に良い相関が観測された。フタロシアニン/ペリレンの場合にも,異常電場以外の内部電場は光電流と良い相関を見せた。この結果は光電流キャリアーが内部電場によって生成されることを意味している。 4.空乏層の存在を確かめるために,電場変調スペクトル強度の変調周波数依存性を0.1Hz〜100Hzの範囲で調べたが,大きな周波数依存性は観測されなかった。その為,現時点では電場変調スペクトル法による空乏層の検出には成功していない。
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