本年度は、測定システムの作製および使用する液晶材料の基礎特性評価を重点に研究を行った。 測定装置は、コプレーナ回路(CPW)がVコネクターと電気的に良好なコンタクトができる微調機構、温度調整機構を有しながら高周波ケーブルの脱着に対して安定でなくてはならない。各種光学ステージと顕微鏡モニターを組み合わせて再現性良くCPWの電気的接続を行うシステムを作製した。プローバによる測定データとの比較を行う事により、CPWとケーブルの接続に用いるコネクタ部分の影響を評価したところ、位相差および損失共に小さく、必要に応じて簡単に補正可能である事が分かった。温度調整に関しては120℃程度まで昇温すると熱絶縁が不十分であり、長時間の測定に耐える対策が必要である。今後光学測定部分の準備を進め、50GHzにおける電気光学効果の評価を行う予定である。 一方、液晶材料の評価に関しては、矩形導波管を利用した反射型セルによる簡単な評価法を提案し、その有効性を実験的に明らかにした。本手法は基本的に単一周波数における測定に有用であるが、ある周波数における複素屈折率を明らかにすれば、周波数をスイープしながら相対的な振幅と位相の変化を測定する事により周波数依存性を評価する事も可能である。 本手法を用いて、種々の市販ネマティック液晶材料における複素屈折率の評価を行ったところ、ミリ波帯では比較的低損失であること、分子長軸方向が垂直方向より損失が小さい異方性を有すること、複屈折(Δn)が可視光の値に比べて30%〜50%程度に小さくなってしまう事等が明らかになった。 EO測定に関しては、評価した市販液晶の中で可能な限り大きなΔnを有するものを用いて行う予定であるが、一方ではミリ波領域で極めて大きなΔnを有する特別な液晶材料探索の必要性も明らかになった。
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