超高周波領域における液晶材料のEO効果の利用を目指した取り組みとして、(1)基礎物性の評価、(2)EO効果測定法の検討の二つの立場から検討を行った。 (1):この帯域では液晶物性データが無いだけでなく測定手法も確立されていない事から、VバンドおよびWバンドの矩形導波管を利用した測定手法を開発した。その結果、50GHzから110GHzに渡る様々な液晶材料の複素屈折率を明らかにする事ができた。ミリ波帯では、可視光領域に比べて異常光屈折率がほとんど変わらないのに対し、常光屈折率が大きくなるため結果として複屈折の値が1/2〜1/3に低下する事が分かった。しかし、低下するとは言えまだ大きな複屈折を維持しており、また損失が小さいことも明らかになっている事からデバイス応用も十分期待できる事が分かった。全てのネマティック材料に対して、分子軸に垂直な方向の損失が平行方向より大きくなるという興味深い結果も得られており、今後物性評価の点からも新しい情報が得られる事も期待される。 (2):EO効果の測定手法およびシステムの検討に関しては、通常のサンドイッチセル構造が容易に形成できる事からCPW高周波回路基板を用いて検討を行った。ITOガラスを組み合わせて液晶セルを構成して位相変調特性を調べたところ、CPW基板電極を駆動するのみでわずか1cm程度の伝搬長で10GHzあたり20°程度の変化が観測された。現段階で動作が確認されたのは15GHz程度までであり、CPW自体の伝搬特性が大きく影響している事が明らかになった。 一方、EO効果を精密に計測するための微小信号測定システムを構築し、通常の液晶セルを評価してみた。現段階では超高周波帯における効果は確認できていないが、通常認識されている液晶の応答速度よりかなり速い10kHz程度までEO信号が確認され、今後の新しい応用展開を期待させる有用な知見が得られた。
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