半導体表面は種々の表面超構造をとり、surface stateを形成する。これらの特異構造に有機分子を吸着させることにより半導体原子と有機分子とでナノ構造を形成させ新規な物性を出現させることが出来れば、将来の有機ナノデバイスの構築につながる可能性がある。従って、まづ第一に半導体表面の特異構造を原子レベルで解明する必要がある。GaP(001)-(2x1)構造は表面第1層がP-Pダイマーからなるという説とGa-Pヘテロダイマーからなるというモデルが提唱されていた。本研究において、高分解能電子エネルギー損失分光(HREELS)、走査トンネル顕微鏡(STM)放射光光電子分光(SRPES)を用いて研究を行った結果、表面のP-Pダイマーの一方に水素が吸着し、(2x1)構造を形成していることが明らかとなった。次に金属電極間に吸着させると分子が金属性を示すという計算結果が報告されているピラジン(C4N2H4)をInP(001)-(2x4)及びSi(001)-(2x1)表面に吸着させ、STMで研究をおこなった。InP(001)-(2x4)表面では吸着量は非常に少なく、ダイマー欠損構造に吸着することを見出した。Si(001)-(2x1)表面ではシリコンダイマー間に吸着し、ダイマーの一方の原子とピラジンの窒素原子が吸着していることを明らかにした。又、吸着量が増加するとピラジン分子はシリコンダイマー列に垂直に1次元的に吸着鎖を拡大することを見出した。このことはシリコンダイマーの片方の原子に不対電子が形成されることを意味する。従って、この不対電子が整列するならば新規な物性を創出することが出来る。今後、この点を解明する予定である。
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