1nmの深さ分解能を目指し、小型低速イオン銃の開発を行った。イオン化室に永久磁石を配置してイオン化効率を向上させ、大口径レンズを用いて透過率を高めた。これにより数100eVという低エネルギーでありながら〜1μAという高いビーム電流を確保することに成功した。関連して低速イオンビームのフォーカス調整と位置合わせのための専用同軸試料台および除算表示機能を持つ2連微小電流計を製作し、正常動作することを確認した。この電流計の除算出力からビーム径を算出するためのJavaアプレットを作成し、インターネットへ公開した。GaAs/AlAs超格子標準試料に対して100eV〜500eVの低速Ar^+およびXe^+イオンを用いてスパッタオージェ深さ方向分析を行い、深さ分解能の評価をMRIフィッティング法を用いて行った。いずれの場合もエネルギーの低下とともに分解能が向上したが、100eV付近で急激な表面荒れが発生し、分解能が極端に劣化する現象が見られた。これは表面リップル構造の形成と関連があるもとの思われる。そこで300eVのO_2^+イオンビームをSi試料に照射したところ、振幅数nm程度のリップル構造が観測された。このことから推測すると、低エネルギー領域でエッチングレートが低くなってくると残留ガスの吸着により表面酸素濃度が増大し、リップル構造が形成されるものと思われる。
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