研究概要 |
明視野走査透過電子顕微鏡(BF STEM)による微小領域のナノ原子構造解析の研究を通して多くの知見が得られた.要点をまとめると以下のようになる. 『解析』 (1)我々が提案したTDSの複素ポテンシャルを使ってBF STEM像とHAADF STEM像を計算する方法を大きな原子番号の物質や厚い試料に対して精度よく計算できるようにlayer-by-layer法を使って拡張することができた. (2)3次元Bloch波を基にした動力学計算から,HABF STEM像の強度はconvolutionで表示できることを示した. (3)並進対称性と2次元の点群を利用するとpartial plane waveの計算を大幅に減少させることができ,対称性のよい完全結晶では計算時間を1/40以下にすることができた. (4)入射beamの空間のinformation limit内で射影した原子柱を分離するようにsemiangleを大きくし,更にdetectorのsemiangleを入射beamのsemiangleと同程度にした装置のHABF STEM像はHAADF STEM像と同程度の空間分解能を得ることができ,微小領域のナノ構造解析に使えることを明らかにした. (5)対称性の利用は超格子を使った欠陥の動力学計算にも使えるため,従来,partial plane waveの数と超格子による逆格子点の増大から困難であった界面等の欠陥の計算ができ,実験像との定量的比較から厳密な構造解析が可能となった. (6)並進対称性と2次元の点群を利用するとpartial plane waveの計算を大幅に減少させることができ,対称性のよい完全結晶では計算時間を1/40以下にすることができた. 『画像処理』 (1)Convolution表示であることと,最大エントロピー法を組み合わせた画像処理方法を構築することができた.この方法は像の質を飛躍的に改善するとともに,information limitを拡大することができ,STEMの画像処理に非常に有効的である. 『実験』 (1)BF STEM, HAADF STEMの試料作成技術をほぼ確立した. (2)対物レンズの非点収差を取り除く方法を確立した. (3)ノイズの軽減にある程度成功した.
|