研究概要 |
高誘電率材料であるHfA10_x薄膜およびHfSiO_x薄膜中の電荷捕獲現象を、XPS時間依存測定法を用いて評価してきた。測定試料は(株)半導体先端テクノロジーズ社で量産装置を用いて開発したものである。XPS時間依存測定法には,VG ESCALAB 220i_XLを用いた。感度の高い磁場レンズモードを採用し、X線パワーを20〜60Wと極めて小さくすることで、時間依存測定を可能とした。試料の下地Si基板から放出されるSi2p光電子の束縛エネルギーを測定することで、下地Si基板表面の電位(界面電位)を求め、高誘電率薄膜中に捕獲されている電荷量を、トランジスター構造や電極を作製することによる影響を受けずに明らかにした。これまでに、薄膜形成プロセス直後にHfA10_x薄膜では約6.6×10^<12>cm^<-2>の電子が既に捕獲されており、一方HfSiO_x薄膜では初期に高濃度の電子は捕獲されていないことを見出し,この違いが,当該HfA10_x薄膜をゲートに用いたトランジスターの移動度がHfSiO_xのものと比べて著しく小さいことの原因であることを明らかにした。本年度は,このXPS時間依存測定法を用いることで,薄膜中の電荷捕獲中心密度ばかりでなく,薄膜の重要な物性である誘電率を推定できることを見出した.具体的には,HfSiO_x膜中Si原子から放出されるSi2p光電子の束縛エネルギーとSiKLLオージェ電子の運動エネルギーを測定する際に,時間依存測定法により膜中に電荷が捕獲される影響をキャンセルした.そして,両測定エネルギーの和として高精度にAugerパラメータを算出して,光学的誘電率を推定した.その結果,NH_3+O_3処理の試料では誘電率は4.7-4.9,一方O_3処理の試料では誘電率は3.9-4.2となった.このことから,NH_3を加えたプロセスをすることにより,誘電率が高くなることが示された.
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