研究概要 |
高誘電率膜は次世代ゲート絶縁膜としてその開発が進んでいるが、信頼性の観点では様々な課題が残されている。最近、電気ストレスや放射線ストレスによって、彩しい量の電荷が膜中に捕獲されることが懸念されてきている。我々は、早期の実用化が期待されている高誘電率材料であるHfAlO_x薄膜中の電荷捕獲現象を、XPS時間依存測定法を用いて評価した。 p型Si(100)基板上に0.9nmの熱酸化膜を形成した後、300℃でALD(TMA+HfCl_4+H_2O)により3nm HfAlO_x膜[Hf/(Hf+Al)=30%]を形成した試料を、窒素/酸素雰囲気中1050℃で1秒ポストアニールした。HfAlO_x、膜に被われたシリコン基板から放出されるSi2p_<3/2>光電子の束縛エネルギーを、x線照射時間の関数として測定した。次にSi2p_<3/2>光電子の束縛エネルギーのX線照射時間0分での初期値と、X線照射による変化の方向と、その飽和値を求めた。そして解析により、高誘電率薄膜中に捕獲されている電荷量を明らかにした。 本試料では、X線照射時にSi2p_<3/>2光電子の束縛エネルギーは高エネルギー側へ時間とともにシフトしてやがて飽和値に達した。このシフトは、HfAlO_x膜中での正孔捕獲により、絶縁膜/Si界面の界面ポテンシャルが変化したために起きたものである。HfAlO_x薄膜では約6.6x10^<12>cm^<-2>の電子が既に捕獲されており、これが,当該HfAlO_x薄膜をゲートに用いたトランジスターの移動度が小さいことの原因であることを明らかにした。さらに、Si界面のSi2p_<3/2>光電子の束縛エネルギーのシフト量は界面ポテンシャルの変化に対応するのに対して、HfAlO_x膜表面に吸着した炭化水素中CのCls光電子の束縛エネルギーのシフト量は表面ポテンシャルの変化に対応することに着日して、これら電荷捕獲中心の分布についで考察した。
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