本研究の目的は第一に誘起位相変調効果を微細構造ファイバーに応用してなるべく低ピークパワーの光パルスで超広帯域光波を発生させること、第二に誘起位相変調効果を用いてスペクトル波形・時間波形の制御及びその理論計算と実験の比較を行うことであった。これについて以下のような研究を行った。 1.テーパーファイバーにチタンサファイアレーザー発振器からのパルスを伝搬して超広帯域光波を発生させ、この光波の位相と振幅を相互相関型の周波数分解光ゲート装置を試作して測定した。測定結果は周波数領域の差分法を用いた計算と比較され、良い一致をみた。これよりテーパーファイバー内でパルスが基本ソリトンパルスに分裂することが示された。 2.微細構造ファイバーにチタンサファイアレーザー発振器からの基本波とその第二高調波パルスを同時伝搬させ、誘起位相変調を利用して超広帯域光波を発生させる実験を行った。この結果、誘起位相変調効果による第二高調波パルスの広帯域化が観測された。特にファイバーとしてコア直径が1μmのフォトニック結晶ファイバー(PCF)を用いた場合、380nmから1000nmにわたる超広帯域光波の発生に成功した。広帯域化における第二高調波パルスの遅延時間依存性が調べられ、理論計算との良い一致を得た。理論計算より、ファイバー中で基本波パルスは基本ソリトンに分裂し、その分裂のタイミングが第二高調波パルスの遅延時間により変化し、スペクトルの特定のピーク波長が変化するという新たな知見を得た。この効果を用いるとスペクトルの特定波長を制御することができ、光スイッチなどへの光デバイスへの応用の可能性があることがわかった。
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