研究概要 |
本研究は,最近になって高品質な結晶が開発されたストイキオメトリック組成のLiNbO_3とLiTaO_3の2次非線形光学定数を精密に測定し,その値を明らかにすることを目的として行った。 昨年度は基本波波長1.31μmと1.064μmで測定を行ったが,測定データを解析する際に必須となる屈折率の正確な値がストイキオメトリック組成の材料では明らかになっておらず,得られた非線形光学定数の値の誤差が大きいことが問題となった。LiTaO_3は試料のサイズが小さく現状での誤差の改善は困難であったが,LiNbO_3は試料サイズが大きく精度向上が可能なため,本年度はストイキオメトリックLiNbO_3の屈折率を同定すべく各種測定を行い,正確な値を用いて再度解析を行うことにより,非線形光学定数を高精度に求めることを目指した。 本研究ではウェッジ法により非線形光学定数の測定を行った。したがって,用いた試料のウェッジ角が正確に求まれば,Makerフリンジ1周期分の試料の移動距離からコヒーレンス長を見積もり,そこから屈折率を決定することができるが,ウェッジ角を10^<-3>の精度で直接測定するのは困難である。そこで,常光線・異常光線それぞれの偏光方向で試料内での多重反射による干渉周期測定と,クロスニコル配置における透過パワーの試料移動距離依存性の測定を複数の波長で行うことにより,ウェッジ角と屈折率の両方を同時に求めた。その結果,±5%以内の精度で2次非線形光学定数を求めることが可能となり,再度解析を行ったところ,基本波波長1.31μm,1.064μmともコングルエント組成のものと誤差の範囲で一致することがわかった。 また,フォトリフラクティブ効果の耐性が大きいMgO添加のストイキオメトリックLiNbO_3の測定も行い,無添加のものと誤差の範囲内で一致することが明らかとなった。
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