本研究は、トンネル内壁や橋げた・ビルディング壁面などの崩落予測、あるいは対人地雷の検知などを目的に、対象物表面付近の状態を音響的に検査する技術に関するものである。物体の比較的表面付近の音響的性質を調べるためには、表面への音響エネルギーの流れ方、複素音響インピーダンスの周波数特性を測定することが有効と考え、本研究ではこれを非接触で実現する測定方式を考案している。すなわち、細い音響管の開口部を被測定面に近接させることで、開口部から放射された音響エネルギーが物体表面にしみ込む様子を音響エネルギー流れ量および音響インピーダンス変化から測定する方法を検討した。 本年度は、音響管内の定在波分布を測定する手法として、音響管中にトレーサ微粒子を充満させ、レーザ光のドップラ効果から空気の粒子速度を検出することを検討した。この場合、レーザ光路上のどの位置で生じたドップラ効果であるかを識別する必要がある。このために、干渉性の低い光源を用いて、可干渉距離で空間分解能を制御する光コヒーレンス法を応用した。まず、目的の音場に対して、1/4波長以下で、かつ粒子変位よりも大きなコヒーレンスを有する光源の実現方法を検討した。広帯域光源の出力を光ファイバ型フィルタで切り出すことでコヒーレンスを調整し、光ファイバアンプによって必要な光量まで増幅した。コヒーレンス長4mm、出力75mWの光源を試作し、ヘテロダイン型干渉計を構成して、音響管内の定在波分布測定を試みた。透明樹脂薄フィルムを多数直列に管内に配置して、これらの振動速度を試作装置で分離測定することで、定在波分布測定が行えることを示した。
|