本年度は群集集団の微視的モデルの構築に先立ってシミュレーションモデルの基礎となる実験結果を集めることを目的としていた。歩行者の大規模集団である群集の巨視的挙動を予測するために、歩行者一人一人をビデオカメラで観察記録し、コンピュータの画像解析により各人の移動軌跡を解析した。以下の二つの状況下の実際の群集移動過程をビデオ観察し、その結果をコンピュータで画像解析を行い、さらにその結果に基づいてシミュレーションモデルを構築した。 (1)歩道橋や地下道で発生する群集移動停滞現象を解明するために、これを単純化したチャンネル対向流の実験観測を行い、群集移動速度や移動パターンを実験的に明らかにした。この実験結果に基づいた格子気体モデルを作成し、そのシミュレーションを行った。この群集格子気体モデルによって、群集対向流の実験結果をよくシミュレートできることを示した。 (2)教室からの脱出実験を行い、その脱出過程をビデオ観察して避難群集移動過程を解析した。避難群集一人一人の脱出軌跡と脱出時間の初期位置の依存性を明らかにした。この実験結果にもとづいた避難群集モデルを作成し、シミュレーションを行った。この結果、避難学生の避難時間、避難軌跡、避難時間の位置依存性を計算し、実験結果と一致することを示した。避難時間の位置依存性と生存確率の場所依存性との関連を明らかにした。二つの出口を持つ教室からの脱出実験を行い、その脱出過程の詳細な避難群集挙動を解析し、コンピュータシミュレーションとの比較を行った。 今後は災害時の停電や火災等による視界不良の条件化での実験を行い、その結果に基づいてシミュレーションモデルを構築する予定である。
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