本研究の目的は、過去の科研費の交付を受けた「能動型画像処理方式による結像光学系収差除去・補正、合成結像法」に関連する研究の延長として、収差補正処理と試料複素透過率定量評価双方に対して妨げとなる非線形結像成分の完全除去を目指すものである。これに導入される新概念は、以前の焦点移動画像平均法に代る円環状対物レンズ瞳による焦点深度拡大処理の導入であり、これに基づく新しい能動型無収差線形結像位相差顕微鏡法を開発する予定である。 本研究での無収差線形結像位相顕微鏡法は結像光学系の焦点深度拡大と透過波・回折波の波数ベクトル制限から発想された。平成15年度(第1年度)においては、まず既存の結像光学系3次元結像理論に円環状対物瞳の効果を組み入れ、結像光学系(光学・電子顕微鏡等を含む)固有の状況を考慮した結像理論体系をまとめた。円環状対物レンズ瞳と8の字領域抽出フィルターの併用によって以前には除去しきれなかった非線形成分が大幅に除去され、再生像は線形結像成分のみで形成されるものと期待される。さらに本理論に基づき動的ホローコーン照明下での無収差線形結像位相顕微鏡3次元結像のシミュレーションを実施した。平成16年度(第2年度)にはこれらの結像シミュレーションの結果を基に、既設透過型光学顕微鏡鏡体の照明系に動的ホローコーン照明装置を取り付けるとともに、円環状瞳付き対物レンズを装着して、「能動型無収差線形結像位相顕微鏡」のテストベンチを完成した。本装置により得られた観察像に上記処理を適用することで、非線形結像成分の除去と位相物体の無収差観察が同時に実現されることが確認できた。本手法は光学顕微鏡におけるまったく新しい結像方式であるとともに、位相板の実現が困難である透過型電子顕微鏡への応用が大いに期待できるものである。
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