研究概要 |
著者の提案した一次元空間的投票モデルの性質を深く解明し,更に,我が国の国政選挙選挙区別得票データから,政党と各選挙区での空間位置を決定できた. まず基礎となるモデルについて,2段階の展開型ゲームで定式化するとDuvergerの法則の扱いが洗練され,既存研究との関係が明瞭になることが分かった. 空間的投票モデルは,選挙理論における唯一の理論らしい理論として重きをなしていたが,現実に実証研究に利用するに必要な,政党と選挙区の政策位置を決定する合理的な方法に乏しかった.著者の提案する選挙区モデルは,そのままの形で選挙区での得票数から機械的に政策位置を決定することが可能である.この決定は超高次元多峰性関数の最大値決定問題となり,計算が容易でないが,工夫を重ねて我が国国政選挙の事例では実際に政策位置を決定するプログラムを作成できた.この結果が有意味な結果を与えるか否かが鍵であったが,実証研究の結果,我が国においては右派対左派の対立軸以上に,都市対農村の対立軸が大きいことが分かり,有効性が確認された. この結果は,国政選挙に対する適用例であるが,マーケティング等他のよく知られた立地問題への応用が可能である. 実証研究の整備として,我が国総選挙の市町村別得票数がデータベース化されていない回について,データの入力を完成させた. 広い意味で関連する結果として,微分方程式の階の有界性の十分条件を与え,その系として,解の大域的安定性が証明される等,その他の結果も得られている.
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