研究概要 |
従来から効率的な解決の望まれていた分数関数和の最小化問題を,既存算法の3分の1未満の計算時間で処理することに成功した.これは,研究代表者が02年に設計した台形分枝限定法で用いた分数関数の劣評価関数を,分数がもつ単純な性質に着目し,これを利用することで大幅に強化できたことによる.厳密に実装すれば非常に高速となるが,実装に多大な手間がかかるため,劣評価関数を簡略した算法も併せて設計した.この簡易算法は,問題の中の分数が少ない場合には厳密版さえも凌駕する性能を発揮した.研究成果は論文にまとめ,現在Global Optimization誌に投稿中である.また,逆凸計画問題の特殊ケースとして逆凸制約関数が1変数関数の和に分離可能である問題に対し,その構造を利用した2種類の厳密算法を設計した.いずれも矩形分枝限定法に分類できるが,一方は双対問題となる分離可能凹最小化問題を繰り返し解き,他方は逆凸計画問題としてそのまま処理する方法を採用した.研究成果をまとめた論文は,Applied Mathematics and Decision Sciences誌に採択されて掲載予定である.この種の問題は分離可能凹最小化問題に鑑みて多くの応用が予想され,設計した算法は今後提案されるであろう他の算法との比較基準に用いられることも期待される.以上2つの問題の研究から,一般の非線形非凸計画問題に対するハイブリッド算法では,サブルーチンとして用いる単体法の効率的な運用が鍵となることが明らかとなり,現在その実装に関する論文を執筆中である.
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