研究課題/領域番号 |
15560051
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
杉山 雄規 名古屋大学, 大学院・情報科学研究科, 教授 (20196778)
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研究分担者 |
只木 進一 佐賀大学, 総合情報センター, 教授 (00202169)
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キーワード | 交通流 / 数理模型 / 相転移 / 渋滞 / パターン形成 / 非平衡 / 自己駆動粒子 / 計算機シミュレーション |
研究概要 |
本研究の目的は、交通流を多体相互作用系の物理的協同現象と捉え、その数理模型を基礎としたシミュレータによる数値実験と実測データとのオンライン照合システムを構築し、渋滞発生などの交通流現象の解析と制御に対する指針を与えることである。 数理模型による研究の進展に比べ、実測データの解析による物理的性質の研究は遅れている。 我々は数理模型により明らかにされた、「多体系の協同現象」という物理機構が渋滞発生の本質であることを、実験的に確証するために、円周サーキットにおける自動車による走行実験を行い、理論で予想した臨界密度においてシミュレーション通りに渋滞が発生することを確認した。この実験は、国際会議で報告され大きな興味と高い評価を得、論文として出版された。実験映像は、国内においても交通流をテーマとした科学テレビ番組に取り上げられ、ひろく報道されている。 我々は、東名高速道路道における実測データより、DFA(Detrended Fluctuation Analysys)という方法により、交通流の振る舞いが非平衡物理系でしばしば観測される1/f揺らぎの性質を持つことを見出した。DFAの方法は、最近、遺伝情報をつかさどるDNAの分子配列の一般的性質や為替レートの時系列変化についての解析に使われているもので、これらの持つ統計力学的な基本的性質を抽出することに成功している。我々はこの方法を交通流に適用し、従来からかの性を指摘されていた交通流のもつ揺らぎの基本性質を抽出することに成功した。この成果は、国際会議で報告され、論文として出版された。 自己駆動粒子(Self-driven Particles)の集団運動による相転移現象という枠組みで、交通渋滞発生を理解し、さらに高次元のパターン形成の問題として、歩行者流や生物集団の流動現象について統一的に理解することについての研究成果について、論文を出版した。ひとつは、通路の歩行者流やパイプ液体中の粉体流に見られる一様流の不安性について解析的に調べ、1次元交通流の場合の縦波揺らぎの増幅による不安定性のほかに、横波による不安定性が現れるパラメータ領域が存在し、応答の敏感さと臨界密度の2つのパラメータでそれぞれの場合に異なる役割で不安定性が誘起されることを見出した。いまひとつは、一般の2次元空間において一様性の不安定性の後に出現する巨視的なパターンに大きな多様性が存在することが見出され、生物集団運動における群形成の問題を物理的に研究する可能性を拓いた。
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