| 研究概要 |
電磁超音波探触子(Electromagnetic Acoustic Transducers, EMAT)を用いた非破壊検査手法は,電磁誘導を利用して非接触で超音波を送受信するものであり,その検査過程は電磁場および弾性振動の方程式により明確に記述することができる.このため,検出情報の定量的利用や逆解析手法による欠陥同定への適用が期待されている.過去の研究で,送受信EMATにより試料を挟み込んだ状態で超音波の送受信を行い,その結果得られた受信波形を逆解析することにより,試料内に存在する楕円柱状空洞の形状および位置の同定を実現した.しかし,実際の検査環境を想定すると,試料に対して片面からの検査が可能になることが望ましい.その解決法として送受信一体型EMATの利用が挙げられるが,送信電流印加後の電流ノイズが受信波形に大きな影響を与えるため,逆解析手法を用いた欠陥同定の実現は難しい.そこで,本研究では斜角方向に平面波状の超音波を送受信することが可能な斜角型EMATに着目し,これを用いた検査システムによる片面からの定量的検査の可能性を検討する.本年度は.まず,斜角型EMATによる超音波送受信過程についての数学モデルを導出し,それに基づいた数値解析を行った.超音波伝播過程の可視化により,超音波の伝播および反射の様子を明らかにし,特定の方向に伝播する平面波(斜角S波)が斜角型EMATにおいて強く送受信されていることを確認した.次に,数値計算により,伝播経路上に存在する欠陥の大きさと受信波形の関係を明らかにした.さらに,数値計算結果の受信波形と,実験結果の受信波形の良好な一致が得られ,モデルの妥当性が確認された.
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