研究概要 |
本年度は、主にアサガオの花に着目して研究を行った。 花弁の折畳み様式の把握のために、蕾を切開して蕾内の花弁の巻込み状況を観察し、また、展開時の花のビデオ撮影を、複数台のCCDカメラと画像処理ソフトにより実施し、展開時間と花弁の展開半径との関係を明らかにした。さらに、花弁を支持していると考えられる花弁軸と花弁から短冊形の微小試験片を切り出し、万能投影機で伸びを観察しながら引張負荷を与え、花弁軸と花弁の引張剛性を評価した。これらの観察結果と実験結果を用いて、花弁部の数値モデルを作成し、蕾の中に巻込まれた花弁部厚さと花弁数との関係や、花弁展開時の花弁巻込み面積と展開半径・花弁数との関係を明らかにした。得られた主な成果は、以下の通りである。 1.花弁軸と花弁のYoung率は、それぞれ、E_A=3.0MPa, E_P=1.0MPaで、花弁軸は花弁に比べ約3倍の剛性があり、花弁を支持する役割を担っていると考えられる。 2.花弁は2つ折りにされ、さらに5つの方向から中心に向かって巻込まれ、蕾の中では円錐形に巻込まれている。また、展開時には、常に中心部から外に向かって花弁が繰り出されて展開するため、花弁が完全に開放されるのは、約60%程度展開した時点である。 3.花弁モデルによる数値解析から、展開初期に大きなエネルギーを必要とし展開の進行にともなってエネルギーは小さくなっていくため、展開初期の展開速度は小さく次第に大きくなる展開様式を採用していると考えられること、展開時に花弁が開放される展開半径は、弁数が大きい方が小さく、それだけ展開に要するエネルギーも小さくなると考えられるが、花弁数が大きくなると花弁内の花弁の巻込み厚さが大きくなり、紡錘型の蕾の中に収納できない可能性があることが明らかとなった。
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