希土類高温超電導バルク試料から、c軸およびそれに垂直な方位に小型試験片を切り出し、機械的特性の異方性および温度依存性を明らかにした。また、試験片側面および破断面の微視的な観察を行い、組織と強度および破壊機構との関係を明らかにした。 破壊靭性 先端の曲率半径が20μm以下の鋭い切り欠きをもつSEVNB試験片を用いたSm系バルクの3点曲げおよび引張り破壊靭性値は1.0〜1.3MPam^<1/2>程度であり、c軸方向の深さを持つ切り欠きの方が、これに垂直なものに比べてやや高い。これは主として、き裂進展に直交する潜在微小き裂の阻止効果による。RTから77Kまでの温度低下により破壊靭性はわずかに上昇するが温度依存性は大きくない。ビッカース硬さ試験によるインデンテーション法破壊靱性は、曲げおよび引張りによる値に比べてかなり低いことが明らかになった。 疲労強度 77Kにおける繰り返し3点曲げおよび引張り試験による応力比0.1の5×10^4回の片振り耐久限度はGd系バルクで70MPaであり、曲げ破壊強度の70%、Y系バルクでも70MPaであり、曲げ強度の最低値と等しく、平均値の80%となった。疲労破面上には200μm程度のボイドとき裂進展方向の段が観察された。 圧縮強度 Sm系バルクのc軸方向負荷の圧縮破壊強度はC軸に垂直な負荷の場合に比べて大きい。3×3mmの断面を持つ試験片の圧縮強度は長さが4〜8mmと大きくなるにつれて増加する。12mmを超えると破砕形破壊の生じるc軸方向負荷の破壊強度はやや増加するが、c軸に垂直な負荷の場合、a-bへき開面に沿う剥離と座屈により低下する。圧縮の縦弾性係数およびポアソン比は、潜在微小き裂の開閉口挙動により、異方性および荷重依存性を示す。これらの圧縮による弾性率および強度は引張によるものと比べて大きい。
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