研究概要 |
水圧破砕で作製される地下人工貯留層を構成するき裂は,損傷領域に囲まれていると考えるのが合理的である。このことは,例えば東北大学東八幡平実験フィールドに作製された地下流体循環システムの人工き裂を横切るようなレイパス上の縦波の位相速度が,き裂を横切らないように取ったそれに比べ大幅に小さく,しかも,き裂内水圧により変化するというフィールド実験結果を合理的に説明するものである。これまでの解析では,この損傷領域の影響についての知見はほとんどない。この点に鑑み,本年度は,き裂を含む岩体の実体波の伝播速度が遅くなった場合についての動的特性を調べ,伝播速度を変えたときに,き裂評価結果がどのように変化するかについて検討を行った。評価解析対象としては,東八幡平フイールドの人工き裂が,近隣坑井掘削時にドリルビット先端から放射される弾性波によって励振されたときに,き裂を横切る坑井内で観測された音圧の応答を選んだ。周波数スペクトルによる評価の結果,以下のことが明らかになった。すなわち,岩体の実体波の伝播煙度を変えると,き裂サイズに関する評価結果は変化するが,き裂開口幅に関する評価結果はほとんど変化しない。以上の検討は,3次元き裂については軸対称き裂の軸対称変形モードに関するものであって,必ずしも十分ではない。例えば,円板状き裂であっても,1つの直径を節とする非軸対称変形モードや,2つの互いに直交する直径を節とする鞍型の非軸対称変形モードも存在し得る。このことを考慮し,だ円板状き裂を取り上げ,ラプラス像空間におけるBetti-Layleighの相反定理を利用して,き裂開口変位を未知量とする特異積分方程式を誘導し,これを数値的に解くためのスキームを定式化した。
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