研究概要 |
ストレスファイバーの3次元的配向の観察のため,Rhodamine Phalloidinを用いてブタ大動脈由来の内皮細胞内ストレスファイバーを染色し,共焦点走査型レーザ顕微鏡観察を行った.その結果,ほぼ純単軸の繰返し変形を受けた細胞には底面部および自由表面部にストレスファイバーの規則正しい配向が見られた.その配向方向は伸展方向にほぼ垂直で,基質面にほぼ平行であった.一方,細部内部を自由表面から底面に向かうストレスファイバーは見出されなかった.この理由として,ストレスファイバーの形成は過大なひずみによる消失,アクチンモノマーの重合反応および隣接するアクチンフィラメント同士の架橋反応だけの結果ではなく,膜に存在する接着分子など,他の因子が重要な役割を果たしているものと推測される. ストレスファイバーはアクチンフィラメントが束ねられることによって形成されるため,アクチンモノマーから始まってストレスファイバーが形成される過程に対して数学的モデル化を行った.その際,細胞底面部で基質面に沿って成長するアクチンフィラメントのみを対象とし,アクチンモノマーの重合・脱重合反応,切断タンパク質によるアクチンフィラメントの切断,フィラメント同士の架橋,アクチンフィラメントの過大なひずみ発生によるフィラメントの消失を考慮した.また,インテグリンを細胞膜上に等間隔に配置した.数値シミュレーションの結果,アクチンフィラメントが束化して,互いに平行に並んだ配向構造がある程度,形成された.しかし,実験で見られるような整然とした並列構造ではないため,モデルの再検討が必要である.
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