研究概要 |
本研究の主題である熱極性物質の概念は,当研究室において提案されたものであるが,一昨年にはその基礎を原子の運動により確認し,さらにこれを拡張し熱的マイクロモードマテリアルなる概念を導入した.今年度はこれを実際の構造物に適用するため薄肉断面部材をとりあげ,これがマイクロモードマテリアルの好例となることを確認することができた. 熱的マイクロモードマテリアルとは,熱極性物質を包含する概念であり,物質の内部の小領域dvに直線的な温度分布を設定するだけではなく,内部にある分布をもつ温度分布を許容する概念である.小領域内部を更にいくつかの領域に分割し,その分割に応じた数の固有モードを与えてこれを表現する. 今年度は実際の巨視的な薄肉断面部材にこれを適用するに際して,力学的な挙動のみに限定して検討を行った.はじめに独立な剛体回転を支配するモードアームを定義し,任意の一点で成立する力の釣合い式を積分平均することで,この概念の3次元モデルにおける巨視的な釣合い方程式の導出を行った.ここで新たに,各中間領域で積分平均された釣合い方程式に,更にモードアームをテンソル積することで,バイモーメントの釣合い方程式を導出している.この導入法はマイクロモードマテリアルの定式化において一般性を有しており,ここに本研究の特徴がある. この一般的なマイクロモードマテリアル概念を1次元化して棒材理論としての定式化を行い,釣合い方程式を導出した.巨視的な座標を部材軸方向にとり,微視的な座標を断面内でとることで薄肉部材をモデル化することができる.そり拘束ねじりにおいて,せん断中心から折板要素のそり零の点までをモードアームとし,折板要素ごとにモードを与えバイモーメントを自然な形で導入した.最終的には従来と類似した形式で釣合い方程式を得ることができた. ひずみエネルギー関数の導関数より構成式も得ており,さらに場の方程式を導出している.マイクロモードマテリアルなる新たな概念を導入することにより,厳密な一般化連続体としての薄肉構造理論を導くことができたといえる.
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