研究概要 |
カーボン繊維などでは,2次極性結合やアンカー効果によりエポキシなどの高分子母材と接合しているが、界面強度は必ずしも高くない。しかし、「通常の環境」下(室温,湿度60〜70%)であれば、複合材料(PMC)の静的破面に大規模な繊維の引き抜けは見られず,繊維の優れた特性が発揮される。しかし,長期にわたる高サイクル疲労試験を行なえば,その破面に(繊維/母材界面のはく離による)繊維の露出が見出される.しかし,「なぜ疲労荷重下では上述のように通常環境下においても界面破壊が増すのか」についてこれまで疑問が呈されることは全くなかった.この界面疲労はく離がPMCの疲労限を低くしているが、これまでの研究では、単に破壊過程を記述するだけで、その理由を明らかにしようとする試みも全くなされていない。 カーボン平織り布を強化材とし、エポキシ樹脂を母材とするCFRPを対象に、材料の製造から破壊に至るまでの環境(雰囲気)を変えて静的および疲労試験を行なった。環境条件は、絶乾および通常の2種類、また、成形プロセスは以下の3ステップに分け、これらを組み合わせて静的および疲労試験を行なった。 (1)成形時:試験片は手積み法により製作 (2)保管時:成形後、試験片は上記の条件下で一週間保管 (3)試験時:疲労試験の場合は破断に至るまでの時間 その結果、静的強度に関しては、通常の環境下であれば微小水分の影響は明確には認められないことがわかった。しかし、疲労強度に関して、特に高サイクル疲労で疲労寿命に及ぼす微小水分の影響は顕著であることがわかった。この場合、(2)成形時の環境条件の影響が極めて大きく、湿度が60%程度であっても硬化前空気中の水分が母材に吸収され、界面接着特性を悪くし、高サイクル寿命を低下させる要因となることがわかった。成形時、相対湿度を20%以下の環境下で成形する必要性のあることが指摘された。
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