研究概要 |
「通常」と考えている湿度環境下であっても僅かな水がCFRPなどの高サイクル疲労破壊に強く影響する.高分子母材を用いた先進複合材料の長期耐久性を考えるとき,従来とは異なった視点、すなわち『微少水分と界面強度劣化』からその破壊メカニズムを考える必要がある.CFRPなどの先進複合材料では、母材クラック、界面はく離など繰り返し荷重下での損傷の発生とその蓄積状況を光学的にその場観察できない。耐久性を向上させるためには損傷の進展過程を詳細に把握する必要がある。本研究では、複合材料の熱弾性効果に注目し、その画像解析から疲労損傷過程を把握することも試みた。賦形性の優れた織物強化材では、織構造に由来する応力集中により通常は耐久性も他の他方向積層板に比べて劣る。いかに耐久性をあげるか、これまで誰も試みてはいない。これらを背景に本研究では、はじめに複合材料の水分の影響を把握するため、はじめに観察の容易な接着継手を対象として、その強度に及ぼす時間効果を調べ、それらが微小水分の吸収によりもたらされることを明らかにした。次に、先進複合材料、中でもカーボン繊維を強化材とするCFRPの耐久性に及ぼす微小水分の影響の把握とその影響を排除する方法、熱弾性による疲労劣化過程の把握とメカニズム解明、耐久性を向上させる方法を見出した。特に、先進複合材料の耐久性に及ぼす水分の影響では、特筆すべき以下の知見を得た。 1.常環境下(相対湿度60%)でも,硬化前のEPは硬化後のEPより8倍も早く吸水する。 2.通常環境下でも,成形工程での吸水を抑止できれば疲労寿命は大幅に伸びる。 3.吸水抑止により,引張り強度も向上する。 成形工程が完全乾燥状態でなくとも,20%RH以下の環境下で吸水は抑制できる。
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