研究概要 |
欠陥検査画像解析を対象に,マルチモダリティ条件下での人間の認知能力の評価を試みた.まず,検査画像の複数属性による識別能力計測により,1属性と2属性での特徴量による判別確率の違いを評価する方法を提案した.また,FRPパネルの欠陥検査画像に基づく適用事例を例示し,1属性と2属性の実験方法と標準見本の作成法,実験により得られる心理測定曲線および各種特性(平均,分散,相関係数などの統計量)を用いたマルチモダリティ条件下での検出確率を示し,提案手法の有効性を検討した. その結果,一般に1属性での検出より属性が増えれば,人間が知覚閾値で判断できる確率は,情報量の増加により向上することが期待できる.実験結果から,弱い正相関(被験者A)や負相関(被験者C)の場合にはマルチモダリティ条件になれば,同一閾値でも1属性による検出確率よりもかなり高い確率で検出できる様子がわかった.たとえば,1属性でy_i=0での50%の検出確率が,マルチモダリティ条件下では,(a)73.7%,(b)59.9%,(c)77.3%に向上した.しかしながら強い正相関がある場合(被験者B)では,マルチモダリティ条件下でもさほど検出確率は向上しない様子もみられた.この理由として,強い相関がある場合には属性間に強い従属関係が存在し,各属性の結合確率による補完効果が弱くなり検出確率が向上しないものと推測された. 成果を要約すると以下のようになる. 1)提案した1属性実験とプロビット法による心理測定曲線の評価法は,単一モダリティでの欠陥検査での検査員の検出能力評価に有効であることを示した. 2)心理測定曲線より導かれる主観的等価値(PSE)の標本分布特性は検査員の技能や経験を抽出し,自動検査閾値の設定に応用できることを示唆した.
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