研究概要 |
ここ数年,三次元構造を持つマイクロ部品の加工には放電加工が利用されるようになったが,現在最も広く使われている市販の微細放電加工機を用いても安定して加工できる最小軸径は5mmにとどまったことがこれまでの実験より判明した。最小軸径の問題を解決するために,筆者らは軸素材の結晶粒径,加工後に生じる加工変質層と放電痕,軸素材自体の製作過程に起因して放電加工前に存在している残留応力,放電加工により新たに生じた残留応力,加工機の位置決め精度や熱変形などの項目について調べ,軸径が5mm以下に加工できない原因を考察した。さらに,細軸加工時に軸の根元近傍側面における放電回数の局所的な増加を避け,軸径細り現象の防止を図るため,切込みごとに軸方向の加工長さをステップ的に短くした加工軌跡を採用した結果,超微粒子超硬合金において直径が約2.3mmの微細軸加工に成功した。なお,マイクロ放電加工における微細化の限界を追求することにより微細化限界の決定因子を解明するため,工作物が多結晶である場合と単結晶である場合の比較を行い,単晶材料の方が多結晶材料より微細加工に適していることや,単結晶材料を加工する際,工作物を陰極とする逆極性での加工の方が正極性の場合より更なる微細化を図れることを確認した。一方,マイクロ放電加工の中仕上げ/仕上げ加工が可能なアイソパルス方式のトランジスタ放電回路を開発し,最短で約30nsのパルス幅での安定な加工を実現した。また,主軸送り機構を定速送りからサーボ送りに変更し,高い放電頻度での加工を実現した。製作したトランジスタ放電回路でWEDG加工を行い,形状精度をコンデンサ放電回路と比較し,同程度以上の精度が得られると同時に,中仕上げ加工・仕上げ加工とも約20倍と加工速度が上昇することを確認した。
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