研究概要 |
抵抗加熱を利用した半溶融鍛造加工法の開発を目的に,まず,ビレットの均一加熱を安定して実現する方法の確立に向け,A357アルミニウム合金ビレットの抵抗加熱特性を実験および有限要素シミュレーションによって調査した。本方法では加熱効率向上のため銅電極とビレットの間に耐熱性があり熱伝導率の低いSUS304の断熱層を介在させる工夫をしている。当初の計画では,銅電極の先端にSUS304の断熱層をクラッドした複合電極を用いる予定であったが,実験の便宜さから,挿入の形で研究を進めた。抵抗加熱では,電極と被加熱体であるビレットとの電気的接触を確保するため接触面に圧力を加える必要があるが,その一方において,加熱時でのビレットの変形は極力抑えたい。変形を抑えるには通電時に加える面圧を小さくすればよいが,小さくし過ぎると,鍛造操業そのものを停止に追い込むスパークが断熱層とビレットの間で発生する。そこで先ず,スパークの発生を防止するための通電時面圧の条件を電流密度との関係で調査し,これを明らかにした。つぎに,ビレットの均一加熱実現のための断熱層の厚さについて,電流密度と通電時面圧との関係で調査し,これを明らかにした。以上の調査で得た知見を基に,歯車の半溶融鍛造実験を行い,鍛造品の性状に及ぼす鍛造条件(抵抗加熱における投入電力量,鍛造における鍛造圧力)の影響を調査した。結果は本方法の高い実用性を支持したが,断熱層厚さの鍛造組織への影響を示した。具体的適用にあたっては,個々の鍛造対象に対して適切な断熱層の厚さの設定が必要である。本研究で得られた成果は,塑性加工学会にて3編の講演論文,塑性加工学会誌に2編,国際会議Metal Forming 2004に1編の論文として公表した。また,国際会議ICTP2005に発表すべく,1編の論文を投稿中である。
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