研究概要 |
本研究は微小量のサンプルに対して生化学試験を行うためのマイクロTAS (Total Analysis System)やマイクロアレイ等のバイオ検査基板の製造法として,アブレッシブウォータジェットによるガラスのマイクロ微細加工技術の開発を目的としている.対象とする加工法では非加工部をマスクで覆い,研磨粒子を有するアブレッシブ流体を露出部に噴射して微細溝を加工する.本研究課題では,種々の基板設計に対応するために,複雑形状の露出部をもつテンプレートマスクを用いて微細溝の加工を試み,その実用化を図る. 平成15年度は,まず加工機を製作し,マイクロTASの最も基本的な要素であるY字型のマイクロチャネルの作成を試みた.製作した加工機上では,被削材は加工部のみを露出させたマスクで覆って保持具に固定されている.ウォータジェットノズルは上部に固定されており,被削材側のX軸とY軸のモータドライブの同時制御により,ノズル直下に対してマスク露出部が移動するようになっている.噴流は直径0.25mmのウォータジェットノズルを用い,最高圧力35MPa,吸水量15.1l/minの横型3連プランジャポンプで供給する.マスクは放電加工によって,超硬合金のプレートに幅50μmのY字の露出部を作成している.加工試験では,アブレッシブ流体として重量濃度2.5%,粒径300〜500nmの酸化セリウムのコロイダル溶液を3000ml用い,噴流圧力30MPa(噴流速度180m/s)の加工条件で,溝幅50μm,深さ1μmの流路が製作し,本加工法の妥当性を明らかにした. 次にマスクの断面形状が溝形状に及ぼす影響を調べた.マスク断面は露出部のみを所定の溝幅にするようにテーパを施したものと,テーパ先端部に0.1mmの垂直壁面を有するものとで加工部の溝断面を比較した.その結果,テーパ先端部に垂直壁面を有する場合は,加工部での圧力降下が大きいため加工能率が低下し,溝深さが浅くなることを確認した.
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