研究概要 |
近年わが国においては高齢化が進み、今や50歳以上の人口が全体の34%を占めるに至った。これに伴って人口当りの老人性疾患による患者数が急増傾向にあり、60歳以上では80%以上が何処かの関節に障害を認められるとの報告もされている。このような関節障害の治療法として人工関節挿入手術があり,その需要も増加の傾向を示している。しかし、インプラント材としてステンレス材料のような鉄系材料が人体に使用されている場合には磁気共鳴画像診断装置(MRI)の使用が困難であり,他の内臓器官を調べる時にも画像化することに障害を来たすことが問題視されている。 本研究は、患者個々のサイズ・形状に合ったインプラント部品を供給するための加工技術の開発を行うにあたり,特にバナジウムフリーの医療用β型チタエウム合金の導入について検討を行うものである。平成15年度は個々の患者における患部形状情報の取込技術の構築を試みた。(1)患者の患部形状について3D-CT装置を用いて撮影した画像を積み重ねることにより,患部の3次元形状を把握と患部形状にフィットするインプラント形状のCADデータの作成を可能とした。また,CAMを用いたツールパスの作成を行い,個々の患者にフィットしたステムの製作システムを完成させた.平成16年度はβ型医療用チタニウム系材料をインプラントに用いる場合の加工技術の確立を目指し,β型医療用チタニウム系材料の加工特性の把握を試みた。(2)工具材料の選定については、チタニウム系被削材と溶着性が少なく、高温安定性に優れたバインダレスcBN材料が有効な材料であることを明らかとした。(3)バインダレスcBN工具材料を用いた場合の切削温度の測定を行い,切削中の平均温度を明らかとした。(4)加えて,バインダレスcBN工具材料損傷機構を明らかにすることにより,適正切削速度領域が3.0m/sから5.0m/sの範囲にあることを明らかとした。(5)また、β型合金を用いたステム形状の軽量化を考慮した新規形状提案に関しては最終的に実物加工には至らなかった。
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