一般的なスパッタリング装置として、ECRプラズマスパッタリング、RFプラズマスッパッタリング、マグネトロンプラズマスパッタリングなどが挙げられるが、これらのプラズマ生成法の問題点として、装置の規模が大きいことや高エネルギーが必要であること、窒素分子の解離率が2%以下であることなどが挙げられる。これに対して、電子ビーム励起プラズマは、装置サイズがコンパクトで窒素分子の解離率が16%と高く、低エネルギーでプラズマを生成することができる。そこで本研究では、電子ビーム励起プラズマを用いたBN薄膜のスパッタリングによる成膜と、その評価を行った。 実験はスパッタリング用にArガス、原料ガスにN_2を用い、BをターゲットとしてSi基板上にBN薄膜を生成した。またスパッタリング効率を向上させるためにターゲットをRFバイアスした。プラズマパラメータであるArおよびN_2ガス流量、放電電流、加速電圧とRFバイアスパラメータであるRFバイアス電圧をそれぞれ設定し、ターゲット基板間距離を変化させて、それぞれ120分成膜を行った。 生成した膜の分布は一般的なスパッタリングのものと同様なものであり、電子ビーム励起プラズマによるスパッタリングを確認した。また、成膜速度は約10nm/minと一般的なスパッタリングのものと同程度であった。生成した膜の構成元素をAESによって分析したところ、BとNの含有比率はほぼ1:1であった。また、FTIRによる結合状態の分析の結果、780cm^<-1>および1370cm^<-1>にsp_2結合のh-BNによるピークを確認した。 生成した膜の機械的特性を調べたところ、ターゲット基板間距離が50mmにおいて10.3GPaであり、同様に摩耗量は0.013mm^3であった。表面粗さRaは4.5nm、摩擦係数は0.085とどちらもターゲット基板間距離に寄らず、ほぼ一定の値であった。
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