研究概要 |
本研究では、チタン系セラミックスにタングステンを添加した新しいタイプの炭窒化チタンタングステン(Ti,W)(C,N)膜に着目し、(Ti,W)(C,N)膜におけるTiとWの成分割合、およびCとNの成分割合が工具摩耗を及ぼす影響を調べることを目的とする。そこで、この目的を達成するために、(Ti,W)(C,N)膜においてTi75atm%とW25atm%の成分割合を持つ合金ターゲットを試作し、超硬合金K10種を母材とし、PVDコーティング法によって(Ti,W)(C,N)膜を形成させた。さらに、(Ti,W)N膜の形成においては、バイアス電圧は-30V、-150V、-300Vの3種類に変化させた。また、(Ti,W)(C,N)膜、(Ti,W)C膜の形成においては、バイアス電圧は、-300Vで一定とした。次に、被膜特性(被膜厚さ、被膜硬度、スクラッチ強度)の測定を行なった。さらに、これらの試作PVDコーテッド超硬工具でクロム鋼SCr420H、ステンレス鋼SUS310Sおよび高強度焼結鋼の切削を行い、市販のTiN、(Ti,Al)N膜PVDコーテッド超硬の工具摩耗と比較した。 得られた主な結果は次の通りである。 (1)被膜にWを加えた(Ti,W)(C,N)膜の密着強度は,TiN,(Ti,Al)N膜に比べかなり高かった。 (2)SCr420H切削においては、(Ti,W)(C,N)膜は、市販のTiN、(Ti,Al)N膜に比べ、耐摩耗性に優れていた。また、(Ti,W)(C,N)膜の中では、バイアス電圧-150Vの(Ti,W)N膜が耐摩耗性に優れていた。 (3)SUS310S切削においては、バイアス電圧-300Vの(Ti,W)N膜が耐摩耗性に優れていた。 (4)高強度焼結鋼切削においては、バイアス電圧-150V,-300Vの(Ti,W)N膜が耐摩耗性に優れていた。
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