研究概要 |
本研究は,種々のスケールの突起が接触した場合に,それらの突起がどのように接触するのか,マクロからミクロにわたる広範囲な尺度で接触の様子を解明するため,特に測定範囲1μm四方以下で見られる微小な突起の接触について詳細に観察,解析することにより固体の接触機構の究明を行うことを目的としている.そのため,スパッタリングにより固体表面に数nmの薄膜を被覆させ,その皮膜が接触によって他の固体表面に移着することを利用して,真実接触部を検出する方法を考案し,その有用性について検討を行っている. これまでの接触実験は,主に大気中で湿度をコントロールして行ってきたが,本年度は試料表面の吸着分子の影響を考察するために,中真空中(約10^1Pa)での接触実験のために実験装置を製作し,検討を行った. まず,実験装置から発生するガス等を真空中にて加熱処理することにより取り除き,実験装置自体の清浄度をより向上させることで可能であると考えられるため,真空度約10Pa,温度100〜200℃で実験装置へのベーキングを繰り返していくことにより実験装置の清浄度向上をはかった. 次に,真空中に押し付け実験装置を入れ,滑らかな鋼球を滑らかなガラス平面にヘルツ接触させる実験を行なった.この結果,現時点では真空中の接触になると薄膜の移着がし難くなる傾向が見られた.この原因としては,接触界面の水分子によるメニスカス力の影響などが考えられる.しかしながら,真空中で水分子の影響がなくなることによって,大気中では現出し難かった高さ数nm以下の微細な突起の接触がより詳細に現出されるようになったことも考えられるため,今後もさらにデータを積み重ねるとともに,試料表面のエネルギーを考慮した解析とも併せて検討を行っていく予定である.
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