研究概要 |
本研究では,最大1mm程度のストローク("ミリストローク")に対してナノメートルレベルの分解能を持つ位置決め機構を,差動ボールねじを用いた簡便な機構により実現することを目的としている.そこで,回転型モータと差動ボールねじを用いてミリストロークを確保し,安価なロータリエンコーダを用いた半閉ループ制御系によりナノメートルレベルの位置決め分解能を実現することをめざす.本年度はまず,差動ボールねじの位置決め性能を検討するための実験装置を構成し,差動ボールねじの位置決め特性に関する予備実験を行った. ねじ軸外径12mm,基準リードがP_A=2.00mmとP_B=1.95mm(相対リード差δ=0.05mm)の差動ボールねじを,定格出力100WのDCサーボモータにより駆動する.ボールねじの循環回路は3.5巻1列で,各ナットはオーバサイズボールにより予圧が与えられている.モータの他端側には,分解能360万パルス/回転のロータリエンコーダが取り付けられている.位置決めステージと,モータステージおよびエンコーダステージは,1組のLMガイド上に組み込まれて直動案内されている. まず,製作したボールねじ単体のリード誤差を親ねじリード測定機により精密に測定し,相対リード差を算出して差動ボールねじとしての送り精度をシミュレーションにより検討した.その結果,両ナット間の位相差が残存しているが,位相調整を行うことにより差動送り誤差を1μm以下にすることが可能であるとの予想を得た.次に,製作した差動ボールねじを実験装置に組み込み,ボールねじの差動性能について予備的実験を行った.その結果,リニアガイドの摩擦の影響による精度低下が認められ,テーブルの案内方式について再検討する必要があることが判明した.次年度ではまず,必要な設計変更を行って実験装置を再構成し,差動ボールねじの位置決め性能に関する本格的実験を実施する.
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