研究概要 |
半径方向偏心を持つ歯車対のかみあい伝達誤差において,既に求めている厳密解を用いて,より簡便に偏心の影響を算出でき,諸元との関係を一見して明らかにできる近似解を導出した.近似解は駆動歯車回転角について陽に表すことができ,2つの正弦波の和+オフセットの形をしていることが分かった.互いに素な歯車を持つ歯車対では,かみあい伝達誤差の変動幅は偏心量の和で推定でき,初期位相にかかわらずほぼ同じ値をとる.これは,昨年度実験により得られた事実を理論的に裏付ける結果である.また,偏心量が基礎円半径に比べて十分小さい場合には,導出された近似解で十分な精度があることが分かった. 逆に,微小モジュール歯車においては,歯数が通常歯車と同程度の十数枚であれば基礎円半径が非常に小さくなるため,偏心量と基礎円半径の比が無視できない結果となる.微小モジュールかつ微小径を有する歯車対が偏心を伴って回転する場合,単純な正弦波曲線の和といった近似解では表すことができない微小歯車に特有のかみあい伝達誤差曲線が得られることが予見できる. かみあい伝達誤差曲線には半径方向偏心以外にも端面振れの影響もふくまれる.本研究費で購入した非接触デジタル測定器を用いて歯車の半径方向偏心を測定し,多数のサンプリング点と最小自乗法を組み合わせることで繰り返し精度が0.1μm程度の偏心量の同定に成功した.同定された偏心量と厳密解から得られるかみあい伝達誤差曲線と,実測データには隔たりがあることも分かってきた.特に偏心位相の高精度な同定が困難であることによる誤差の成分が考えられるが,それ以外に,歯車の軸方向偏心(端面振れ)の影響が重なり合っているものと推測される.厳密解と実測データのbest-fitを行うことで,かみあい伝達誤差曲線から偏心量・偏心位相を同定し,この端面振れに関する解析を行うべく準備検討中である.
|