研究概要 |
転がり軸受の回転非同期振れを10nmレベルにするためには,軸受各部の幾何学的形状誤差を小さくする以外に潤滑剤や保持器の挙動を把握する必要がある.本年度の研究実績としては,軸受内部観察とNRRO,動トルクが同時に測定できる装置を開発した.これまでに開発した装置の特徴である(1)振れ測定位置が軸受位置と同じであり,高さ補正の必要がない(測定位置が軸受位置より高いと過大,低いと過小評価となるので補正が必要)(2)回転基準となる静圧エアスピンドルと測定軸受の偏心が無視できる(偏心があってもエアスピンドルからのラジアル反力は発生しない)(3)軸受の振れに対する抵抗力を極力減らしている(軸受が振れようとする力を妨害しないように、非接触で回転を止めて、且つアキシアル荷重(予圧に相当)を負荷できる機構を搭載)(4)NRROと軸受トルクを同時に測定できるを引継ぎ,かつ軸受の内部観察を行えるような装置とする.これまでの装置は,軸受が軸受カバーに覆われており,外側から見ることはできない.既存測定装置に以下のような改良,機能追加を行った. (1)アキシアル荷重を下側から負荷し,軸受上面をフリーにする 軸受の振れを妨げないようするには,アキシアル荷重を非接触で負荷することが必要である.内輪を回転軸に固定し,下側から静圧スラストパッドを用いて非接触でアキシアル荷重を負荷する. (2)高速度カメラで軸受内部を観察・記録する(本申請で購入済み) 軸受上部に高速度カメラを設置し,軸受の内部挙動を観察・記録する.NRROや動トルクの変動と内部挙動の関係を解明するためには,不可欠の改良である.コンピュータ処理を行い,保持器の変動やグリース巻き込み等の高速現象を観察するためには,通常のVTRではなく専用の高速度カメラが必要である. 装置は平成16年1月に完成し,回転条件や潤滑条件等をパラメータとして、軸受内部挙動とNRROの関係解明についての実験を進めている.軸受上部から潤滑油を滴下し,内部の潤滑状態を変化させた瞬間に保持器公転周期振れが急増する現象が観察されており,nmレベルの振れが問題となる用途においては,転がり軸受に不可欠とされていた潤滑剤が悪影響を及ぼす可能性があることを明らかにすることができた.
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