研究概要 |
本研究の目標は,高機能ばねの不可解な変形特性の解明やばね材料の材料特性測定法の確立にある。すなわち,高機能ばねの一種である定トルクばねやコイルドウェーブばねなどが示す特異な変形特性を定性的,定量的に明らかにするために新規に非線形理論を適用して理論的に解明することである。さらに,本研究では,極薄板化,極細線化されたばね材料の材料特性の解析について世界基準となる測定手法の確立も目指している。以上のような世界的にも重要な課題の追求によって,高機能ばねに代表される柔軟機械要素の変形の制御,さらに柔軟機械要素を組み込んだ機械システム自体の精度向上に資せんとするものである。以上の点に鑑み,本年度(平成15年)は次の5項目について研究を進めた。 1.ばね要素に関する解析モデルの構築および解析モデル対する理論的解柄(大槻担当) 高機能ばね(定トルクばね,コイルドウェーブばね)についてモデル化し,解析理論式を導いた。 2.非線形変形解析理論の数式計算処理(大槻担当) 複雑な数式が多数含まれた解析理論式の計算処理を実行するとともに大変形状態のビジュアル化を図り,理論計算に基づく変形の様子を視覚的に把握できるようにした。 3.大変形を実現するための実験装置の試作(大島担当) 導かれた解析理論の適用性を確かめるために,実際に変形実験を行う。そこで,目的の変形試験を行い得る実験装置(製作予定の試作装置1号機)を新たに試作した。 4.薄板・細線用として考案した材料特性試験法の有効性検討(大島担当) 極薄板化,極細線化された試料の縦弾性係数について,大変形軸圧縮試験法の有効性について検討した。 5.ばねの変形及びばね材料特性に関する調査研究並びに研究成果報告(大槻,大島担当) 高機能ばねの変形解析は極めて希少な解析例であるとともに,用いた解析手法は拡張性が高く,また,薄板や細線の材料特性測定法は世界的に有用性が高い。以上を踏まえて,本研究に関連して調査研究を行うとともに,研究で得られた理論的,実験的知見結果について,加入学会(日本機械学会)で研究成果の報告を行った。
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