研究概要 |
本研究では,握力障害者リハビリテーション用力覚提示デバイスならびに制御システムの開発を行った.本装置はDCモータと歯車減速機,ロータリーエンコーダ,計測・制御用パソコンなどの組み合わせからなり,モータの反力をPCでコントロールすることにより,各指(5指)の加圧力ならびに総合力としての握力をトルクとして指示することができる.具体的には,(1)レバーを握ることにより握力を回転力に変え,モータの反力を任意にコントロールしてレバーに取付けられた軸に負荷トルクを与える,(2)トルクの検出だけでなく,小型圧縮型ロードセルを用いて各指(5指)の加圧力測定も行える,(3)レバーの握り角度はロータリーエンコーダで検出する.(4)レバーの握り角に対応してCG画像が変化し,無味乾燥なリハビリにモチベーションと楽しさを与える.(5)本装置を使用して健常者の握力低下の状況(筋肉疲労)なども測定できることがわかった.本リハビリシステムの使い勝手や機能について,関西医科大学付属滝井病院総合リハビリセンターの医師・作業療法士・被験者から意見を求めた.その結果,各指の加圧力が正確に測れる,正確なトルクや握り角度の測定ができる,反力の調整が自由に行える,などの評価を得たが,リハビリシステムとしては,(1)装置が大きく,高価すぎる,(2)レバーが握れるとは限らない,(3)装置の使い勝手が悪い,(4)機械としてのイメージが強い,(5)CGはあまりインパクトが無い,など否定的な意見が多かった.その結果,本装置の改良よりも,同リハビリセンターの医師と共同で,医療現場に密着した,患者にやさしい握力リハビリシステムの開発を優先し,空気圧利用方式の試作機を完成させた.新しいシステムは,2個の柔軟なボールとポンプ,圧力計,A/Dコンバータ,ノートPCなどから構成されている.患者,作業療法士からも好評で,患者の握力のデータも収集できるようになった.
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